こんにちは、サクです。
今回マーケティングトレース実施したのは、FA業界の超高収益企業のキーエンスです。
一般的にはなじみが薄いFA業界(ファクトリー・オートメーション)、工場などに使用される制御機器と呼ばれる製品を扱っているメーカーです。
高収入企業としても知られるキーエンス。
どのような成長戦略をとっているかトレースしてみたいと思います。
直近の業績
キーエンスの直近の業績は絶好調です。
営業利益率は驚異の55・4%!
競合他社と比べても段違いに高い営業利益率となります。
※キーエンスはFA専業ですが、オムロン・三菱電機は複数のBUがあるので一概には比較できないかもですが、製造業の中でもキーエンスの突出した営業利益率を生み出しています。
STP分析
キーエンスは競合他社と比較してどのような違いがあるのでしょうか。
STP分析から違いを考えてみます。
セグメンテーション/ターゲティング
セグメンテーション/ターゲティングは競合他社とは大きくは変わらないと思われます。
その顧客の現場への入り込み方が、競合よりも深いと感じられます。
ポジショニング
ポジショニングマップでは下記のように整理しました。
一般の競合メーカーが代理店を介しての販売に対し、キーエンスは直販体制を取っていることです。
この直販体制が、競合メーカーとの大きな差別化であり、また商品開発に優位性を生んでいます。
4P分析
4Pのフレームワークで分析します。
Product
キーエンスが世に送り出す新商品の7割が「世界初」「業界初」。
これは販売を直販体制にしていることから、顧客の課題・ニーズを吸い取り、商品開発につなげられているからだと思われます。
顧客の顕在化しているニーズだけでなく、潜在的ニーズも取り込むことにより、「世界初」「業界初」の高付加価値商品が生まれる理由となります。
実際に安全機器、イオナイザー、マイクロスコープなど、発売自体は後発であるにも関わらず、顧客ニーズをいち早く機能に取り込み、マーケットシェアを獲得していきました。
Price
キーエンスの生産面での特徴は、ファブレスです。
工場を保有しないファブレス化にすることで、設備投資費用を圧縮。商品開発や営業に集中できる体制を取っています。
しかしファブレス化にすることで単純に固定費が圧縮するわけではなく、協力工場との信頼関係に基づく情報管理やコスト管理を進めていると思われます。
最近の半導体・素材不足によるサプライチェーンの混乱がある中で、キーエンスの製品供給力は群を抜いています。
また顧客層をセグメントしており、エンドユーザーやE1などには比較的安く、マス層には高い価格帯を設定し、利益を確保する戦略を取っているようです。
Place/Promotion
キーエンスは代理店や販社を通さず、専門知識を持ったキーエンスの営業担当者が生産現場に足を運び、課題等を直接ヒアリングしています。
そして隠れたニーズを見つけ、顧客の課題に合わせて最適なソリューションを提案。
さらに顧客からの生の声を商品開発にフィードバックし、商品の改良や新商品開発に活用。
直販体制 → ソリューション営業 → 課題・ニーズの発見 → 商品開発・・・
このループが上手く回転していることが最大の特徴と思われます。
また顧客の製品設計の上流である開発工程でもマイクロスコープや3Dプリンターで入り込むことが可能なので、いち早く顧客の製品開発情報を入手できる仕組みもあると思われます。
キーエンスの成長要因の整理
キーエンスの成長要因としては、
- 代理店を通さない直販体制品により、直接顧客の課題・ニーズを吸い取り、商品開発につなげている
- ファブレス化により固定費削減、協力工場との連携によって急速に変化する市場に対応
- 上流からの開発情報を入手することで、競合よりも早くアプローチすることができる
また営業活動も目的を持った顧客訪問や時間管理を徹底し、徹底的に無駄を排除し、効率性を追求しているようです。
もし自分がキーエンスのCMOだったら
ここからは、自分がキーエンスのCMO(チーフマーケティングオフィサー)だったらという目線で考えます。
現在半導体不足・素材不足等により、サプライチェーンの混乱がまだまだ継続していく見込みです。現在の供給能力とのバランスですが、まだ入り込めていないエンドユーザーやE1へのトップセールスを集中的に実施していきます。
高付加価値製品は、スイッチングコストが高いので切替が難しいのですが、このタイミングでしたら切替しやすい可能性があります。
また今後の人手不足はさらに深刻になりますので、ロボット分野や省人化の商品開発の検討も進めたいところです。
中小企業が参考にできる戦略
中小企業が参考にできる戦略としては、やはり顧客の課題・ニーズをしっかりと把握して商品・サービス開発を進めることではないでしょうか。
それをアジャイルでどんどん回していき、顧客が求めているものができれば、市場を創造していくことができると思います。
企業側はプロダクトアウト的発想になりやすいので、ぜひ顧客視点を忘れずに商品開発を進めていきましょう。
以上、サクでした。