こんにちは、サクです。
今回は、世界標準の経営理論(入山 章栄著 ダイヤモンド社)についてご紹介します。
ボリュームが多い本ですので、今回は知の探索・知の深化の理論、つまり「両利き経営」についての要約です。
イノベーションと組織学習
イノベーション・組織学習に関する理論は認知心理学を基礎においたカーネギー学派の影響を受けています。
カーネギー学派とは、企業行動理論(behavioral theory of firm : BTF)や知の探索・知の深化の理論の総称のことです。
イノベーションと組織学習に違いは何か。
「何かを経験することで学習し、新しい知を得て、それを成果として反映させる。」という点では同義となります。
学習の結果、新しく得られた知の成果が極めて革新的ならイノベーション、改善のレベルなら組織学習という差になります。
そして組織学習とは「経験の関数」として生じる「組織の知の変化」と定義でき、組織学習のキーワードは
・経験(experience)
・組織の知の変化
と考えられます。
要は、
イノベーションは「知の探索」という経験を通し、新しい知を生み出す(=組織の知を変化させる)ととらえられます。
組織学習の循環プロセス
組織学習の循環プロセスは下記の図のように表せます。
この循環プロセスは、
・組織・人・ツール
・経験
・知
という3つの要素で構成され、各要素をつなぐ3つのサブプロセスに分解できます。
サブプロセス① 組織・人・ツール ⇒ 経験
組織・人は何らかの意図を持って行動する。行動した結果、「経験」する。
「知の探索」が当てはまります。
サブプロセス② 経験 ⇒ 知
組織はその経験を通じて、新たな知を獲得する。
そして知の獲得には3つのルートがあります。
1.知の創造:組織は経験を通じて新しい知を生み出す。
2.知の移転:人・組織はみずから知を生み出さなくとも、外部から知を手に入れることができる。
3.代理経験:新しい知の獲得は、組織自身の経験だけから得られるとは限らない。他者の経験を観察して学ぶことができる。
サブプロセス③ 知 ⇒ 主体
新しく生み出された知は、何らかの形で組織に記憶されなければならない。知の保存と知の引き出しが必要。
結局のところ、知の探索・知の深化とは何かというとサブプロセスを通して、
新しい知を求めるのが「探索」
今持っている知をそのまま活用するのが「深化」
ということになります。
両利きの経営
なぜ知の探索と知の深化がイノベーションに重要なのか。それは
新しい知とは常に、「既存の知」と別の「既存の知」の『新しい組み合わせ』で生まれるからなのです。
しかし人・組織では人の認知には限界があるという課題が発生します。「今認知できている目の前の知同士だけ」を組み合わせる傾向があるからです。
人・組織が新しい知を生み出すために必要なことは、
「自分の現在の認知の範囲外にある知を探索し、それをいま自分の持っている知と新しく組み合わせること」 = 知の探索
です。
一方で商売のタネになる可能性があれば、
そこを徹底的に深掘りし、何度も活用して磨き込み、収益化する必要 = 知の深化
しなければなりません。収益化する必要があるからです。
この2つをバランスよく実施していく必要があるのです。
日本企業の課題
多くの企業、特に日本の企業は頭の中では理解していても、なかなか実践できていません。なぜなら、
知の探索は経済的、人的、時間的にコストがかかります。また未知の領域ですので不確実性が高く、失敗に終わる可能性が高いのです。
一方の知の深化は、既存知の活用なのでその見通しが高く、コストやリスクも小さい。
短期視点で見ると、知の深化に注力した方が短期的に合理性があるのです。
結果、短期的な収益性が高まる一方で、企業の知の探索を損なわせ、中長期的にはイノベーションが低下していくことになるのです。
この状況をコンピテンシー・トラップと呼ばれています。
ですので、
企業がイノベーションを取り戻すには、自社を様々なレベルで「知の探索」方向に押し戻し、両利きのバランスを取り戻すことが重要
まとめ
両利き経営の必要性が理解できたかと思います。
いわゆるイノベーションのジレンマに陥ることは、知の深化に偏り、知の探索を実践できていなったと考えれます。
企業の資源が限られる中で、どうバランスを取るかが重要となると感じました。
詳細の内容はぜひ著書を一読していただければと思います。
以上、サクでした。