こんにちは、サクです。
今回も、今読んでいる世界標準の経営理論(入山 章栄著 ダイヤモンド社)についてご紹介します。
ボリュームが多い本ですので、今回はリアル・オプション理論についての要約です。
リアル・オプション理論とは
リアル・オプション理論とは、事業環境の不確実性を理解して、それを前提に少しづつ始めるという考え方です。
金融工学における事業評価手法で、変化の激しい事業環境の中での投資意思決定を考えるうえで重要な考え方となります。
オプション取引等を応用した考え方です。
DCF法が十分に取り込めなかった「事業環境の不確実性」を事業評価に活かす理論となります。
DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法の限界
事業評価の定番方法はDCF法です。DCF法は、将来その事業が生み出すであろうキャッシュフローにより事業価値を評価します。
DCF法は将来のその事業が生み出すキャッシュフローを、現在価値に直したうえて合計し、そのキャッシュフロー合計から初期費用を含めたコストを差し引く。結果としてプラスなら事業に投資すべきだし、マイナスなら投資すべきでない、という投資意思決定をおこなうことになる。
DCF法では、現在時点で将来の事業環境を予測して事業計画を立案し、その予測を前提に将来キャッシュフローを計算します。
ここでのポイントは不確実性が高い事業計画は、その事業の成長性の予測値も不確実性が高いため、控えめな数値で検討されることになり、結果事業計画が却下されることが多くなることです。
リアル・オプションと不確実性
一方リアル・オプションの事業計画・評価法では、この不確実性を「活かす」発想をします。
要は、「当初計画よりも小さい初期費用で初めて、とりあえず狙っている事業を始める」というものです。
小さく始めて一定期間が過ぎれば、不確実性は低下します。その事業の成長性を見極めがつき、成長性が高いと判断できたら追加投資をしていきます。逆に成長性が低いと判断したら撤退すればよいということになります。まだその時に見通しがつかなければ、不確実性が高い状態ですので、そのまま小規模で事業を続けていく判断もできます。
メリットとして、以下4つがあげられます。
ダウンサイドの幅を抑えれれる
市場下振れ(ダウンサイドの際の大幅損失)を抑えることが可能
アップサイドのチャンスを逃さない
上振れ(アップサイド)のチャンスを逃さずに済む
不確実性が高いほど、オプション価値は増大する
不確実性が高いとは「上振れのチャンスが大きい」ことになるので、段階投資によって下振れの損失を抑えてまず投資すると、不確実性が高いほど上振れが大きくなり、それはオプション価値が増大することにつながります。
参考:リアル・オプションの事業評価手法
学習効果
小規模でも、とにかく事業を始めれば、その市場の潜在性や顧客の嗜好が学べ、その経験を通じて、事業環境への不確実性が下がっていきます。
リアル・オプションの神髄は、不確実性の高い状況で将来オプションを意図的に作り出し、逆に不確実性を活かすこと
リアル・オプション戦略はいつ有効なのか
リアル・オプションは一定の条件を満たすときに有効となります。
条件1.投資の不可逆性が高いこと
いったん投下すると撤回できない性質の投資であること
条件2.オプション行使コストが低いこと
条件3.事業環境の不確実性が高いこと
合わせて「事業環境を見抜く力」を強化する必要があります。人・組織がいかに事業環境を「正確に認知できるか」を考えていく必要がでてくるのです。
リアル・オプションはさらに重要となってくると考えられます。「リーン・スタートアップ」の考えのように、不確実性の高い事業環境下では、とりあえず実用最小限の機能の製品を作って売り、市場の反応を見て製品を変えながら再投入するサイクルを繰り返す」ということに考え方になります。
日本の製品は、発売当初から機能が盛りだくさんで、その後の改造などが遅い印象ですよね。海外はとりあえず機能は抑えた製品を販売して市場の反応を見て修正していく。
ユーザーの趣味趣向が変わりやすい現代では、小さくスタートする方がよいかもしれません。
まとめ
中小企業診断士の財務の勉強をされた方、特に二次試験の勉強された方は既視感があるのではと思います。
そうです、デシジョンツリー分析ですね。
多段階投資の場合などの正味現在価値の期待値を計算して、投資の有無を判断する手法です。
私はデシジョンツリーは苦手でした(汗)。
出典:https://okugoe.com/real-options/
診断士試験の勉強は、経営学の色々な理論を知ることができるので、やはりやっておいて損はないと感じました。
https://sakutetsu.com/book-23/
https://sakutetsu.com/books-3/