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世界標準の経営理論④ ゲーム理論

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世界標準の経営理論④ ゲーム理論

こんにちは、サクです。

今回も、今読んでいる世界標準の経営理論(入山 章栄著 ダイヤモンド社)についてご紹介します。



ボリュームが多い本ですので、今回はゲーム理論についての要約です。

ゲーム理論とは何か

ゲーム理論とは、例えば「相手がある行動を取ったら、自分はどう行動するか」あるいは「自分がある行動を取ったら、それに対して相手はどう行動するか」といった、相手の行動を合理的に予想しながら、互いの意思決定・行動の相互依存関係メカニズムと、その帰結を分析するものです。

自社の戦略変更が競合の戦略に影響し、また競合の戦略が自社の戦略に影響するなど、互いの意思決定の「読み合った」結果として何が起きるのかを考えるのが、ゲーム理論の中心課題となります。

同時ゲームの場合のゲーム理論

クルーノー競争

仮にある市場でA社、B社の2社での寡占状態だった場合、

2社が生産量などの数量について意思決定をする状況を「数量ゲーム」と呼ぶ。

意思決定が同じタイミングで行わることを「同時ゲーム」と呼ぶ。

クルーノー競争は、戦略変数としては生産量を考えます。自社の数量を最適化する行動を行っていきます。

そこで、競合が生産量を「増産」「現状維持」のどちらか分からない場合、合理的意思決定としてはどのようになるでしょうか。

ナッシュ均衡

A社の立場になった考えてみると、A社が考えるべきは「B社の取りうる行動それぞれに対して、自社の最適な行動は何か」になります。

同時ゲームでは、合理的な各プレーヤーは相手の取りうる行動それぞれに対する自分の行動の利得を考え、自分に有利な意思決定をする。

このときに相手の行動如何にかかわらず一つに絞り込める選択肢がある場合、それを支配戦略といいます。

相手の行動を所与として、その行動の場合分けを行い、それをもとに自社の最適な戦略を探し出し、最終的に両者の定まった結果(均衡)をナッシュ均衡と呼びます。

ここで仮にA社、B社ともに増産することが支配戦略だった場合、両者が支配戦略を持っているナッシュ均衡となります。

ポイントとして、ナッシュ均衡は安定的ではあるが、必ずしも両者にとって最善の状況ではないというこです。

ベルトラン競争

ベルトラン競争は、戦略変数としては価格を考えます。自社の価格を最適化する行動を行っていきます。

A社とB社が自社製品の価格戦略を検討しているとします。2社には「前年と同じ価格を維持(現状維持)」と「価格引き下げ」の2つの選択肢があります。

両社が価格引き下げという支配戦略を持っていたとすると、結果として、ナッシュ均衡は両社が価格を引き下げを選ぶことになります。

ベルトラン・パラドックス

このように、典型的な非協力ゲームのベルトラン競争では、両社ともに価格を引き下げ、両社とも利益を失う状態となることが多い。いわゆる価格競争に陥ってしまうのです。

本来なら企業は寡占では利益が上げやすいが、過度なベルトラン競争を行うと、完全競争とおなじような水準まで利益率が下がっていくことを「ベルトラン・パラドックス」と呼びます。

ベルトラン・パラドックスを避けるためには

ベルトラン・パラドックスを避けるためには、十分な差別化を行うことです。自社の製品・サービスが十分に差別化されていれば、ライバルの価格変更にもあまり影響を受けないで済みます。

逐次ゲームの場合のゲーム理論

いままでは2社が同時に意思決定をする同時ゲームでしたが、今回は逐次ゲームでの状態についの説明です。

逐次ゲームとは

逐次ゲームとは以下のことをいいます。

2社が同時でなく、順番に意思決定する状況を「逐次ゲーム」と呼ぶ。

イメージとしては、チェス・将棋・囲碁のようなゲームですね。

後手プレーヤーは先手プレーヤーの動きを知った上で、自分の手を打てます。しかし逆に言えば、先手は「自分の打ち手に後手がどう反応するか」を予測して先に動くことができることになります。この先手をリーダーと呼び、後手をフォロワーと呼びます。

逐次ゲームで意思決定の起点になるのは先手のリーダーです。「自社がある戦略を選んだら、相手はどのように反応するか」を予測しながら、先に自社の戦略を決められるからです。要は「自社に都合のいい方向に、相手の意思決定を誘導できる」のです。
先手を打てるリーダーは、同時ゲームの時より自社に有利な状況を作ることができるのです。

逐次ゲームのリーダーになるためには

逐次ゲームのリーダーになるためにはどうすればよいでしょうか。それは、

「先に戦略を宣言することにより、逐次ゲームの状況を生み出す」

ことで可能となります。
そこで重要なポイントとして、

・その宣言が信用できること

・宣言する戦略が「強きの戦略」にすること
※生産量など数量なら現状維持より増産

但しフォロワーも「強気の戦略」を打ち出すと予想される場合、裏目に出る可能性があり消耗戦なりやすくなります。むしろそのような時は現状維持などの「弱気な戦略」が有効となります。

価格競争は続くのか

A社とB社がベルトラン・パラドックスに陥るのは、実は「1回きりのゲーム」という仮定がありました。しかし実際のビジネスでは引き続き両社がライバルであり続けます。1回きりのゲームではなく、「無限繰り返しゲーム」と呼ばれるものなのです。

そうであるならば、両社はベルトラン・パラドックスに陥る価格競争を無限に続けるかというとそうではありません。両社は合理的は判断の帰結として、むしろ価格を下げなくなります。
これからも延々と続く関係を前提に、「互いに傷つけ合うのは合理的でないから、こちらも攻撃しないし、相手も攻撃しないだろう」と、相手を合理的に信頼する状況が起きるのです。

まとめ

この世のだいたいのことはゲーム理論で説明がつくかもしれないと著者は考えています。人は合理的であり、その合理的な人間たちが織り成す社会を記述するのがゲーム理論と考えることができると思われるからです。

特に繰り返し続いていくビジネスの信頼関係は、単なる性善説でなく、合理的は判断の帰結として起きているととらえることができるのです。

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