こんにちは、サクです。
本を読んで備忘録のために、おすすめ本の要約をしようと思います。
今回は、今読んでいる
世界標準の経営理論(入山 章栄著 ダイヤモンド社)の
「SCP理論」
をご紹介します。
ボリュームが多い本ですので、今回は中小企業診断士試験の企業経営理論で勉強する競争戦略にあたる部分についてフォーカスしてみます。
ポーターのファイブ・フォースモデルなどのフレームワークを覚えていらっしゃると思いますが、その元になった理論の説明となります。
以下自分なりにわかりやすく要約します。
SCP理論について
SCP理論とは、「structure-conduct-performance」(構造-遂行-業績)の略称です。
経済学で「完全競争」「独占・寡占」を学びました。
SCPの本質は自社の競争環境をいかに完全競争から引き離し、独占の方向にシフトさせるかです。
自社の競争環境をいかに「独占」に近づけるか
このSCP理論をベースにした戦略フレームワークで有名なのが、
ポーターの「ファイブ・フォース」、「戦略グループ」、「ジェネリック戦略」です。
以下簡単にSCPフレームワークを振り返ります。
前提とし、市場構造を規定する条件が与えられれば、市場は最終的に均衡状態となる。
ファイブ・フォース
ファイブ・フォース分析は産業分析のフレームワークです。その骨子は「産業の収益性は、5つのフォース(脅威)で規定される」というものです。
フォースが強い産業は「完全競争」に近づくので収益性が低くなり、フォースが弱いほど「独占・寡占」に近づくので収益性が高くなります。
5つのフォースは以下となります。
- フォース1. 潜在的な新規参入企業
- フォース2.競合関係
- フォース3.顧客の交渉力
- フォース4.売り手の交渉力
- フォース5.代替製品の存在
ITのさらなる進展によって、例えば製品・サービスの比較を容易し、「顧客の交渉力」を強めることになるなど、IT活用が今後の中小企業の成長に影響していくと考えることができます。
ファイブフォースの正しい使い方として、2点あげられています。
- ファイブフォースは産業構造・収益性の現状分析だけでなく、将来の予測に使うと有用性が増す
- ファイブフォース分析を複数の階層・レベルで行うことが重要
戦略グループ
戦略グループとは、自社と同業他社を、製品セグメント構造などをもとにグループ化することです。グループ化により、「どの企業が自社にとって直接のライバルか」「どのグループが優位か(移動障壁が高いか)」などを分析します。
ジェネリック戦略
ジェネリック(包括的)戦略は、自社が業界内で取っている「ポジショニング」を検討するフレームワークとなります。これは「コスト主導戦略」と「差別化戦略」に分類できます。
差別化は、自社製品・サービスが他社とうまく差別化することができれば、他社と真正面から価格勝負をしないで済みます。またロイヤルティを持った顧客は他社製品や代替製品に容易には切り替わらないでしょう。
一方、コスト主導戦略は、価格競争による完全競争に近づくので本来は望ましくないが、その企業が圧倒的なコスト優位を持って市場シェアを大きく取れるなら、競争環境はむしろ独占の方向に向かうことになります。
コストで圧倒的に勝てる条件がそろっている時に限り、コスト主導戦略は追求する価値がある。
SCP理論フレームワークの限界
SCPフレームワークが発表された後、いろいろな研究がされてきたなかで、以下のようなことが分かってきています。
・産業属性が企業の収益率に影響を及ぼすことは間違いないが、その影響を課題評価しないことが重要
・戦略グループ内でも収益率がばらばら
・持続的な競争優位が現在のビジネスに当てはまらない。一時的な競争優位を連鎖して獲得する必要がある
SCPは古典的な経済学に立脚しており、「安定」と「予見性」を前提としているため、市場は最終的に均衡状態なるという仮説のうえに立脚しています。
しかしある業界がハイパーコンペティションにあるなら、競争環境の方向性が極めて予見しにくいため、SCPモデルは通用しにくくなる可能性があると考えられます。
このような理論が背景があることを認識し、「思考の軸」として活用することが必要と筆者は述べられています。
診断士が企業を診断していくうえでも、この「思考の軸」を意識して経営戦略を考えていく必要があると思われます。